発議案番号 | 発議案第9号 | 提出者 | 石井昇 伊藤とし子 木崎俊行 三井義文 稲田敏昭 |
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議決年月日 | 令和5年7月3日 | 結果 | 否決 賛成8人、反対19人 |
本立法の最大の問題は、その第12条に「全ての国民が安心して生活できるよう留意する」との規定があることである。性的マイノリティー以外の権利擁護のためなどとし、「多数派の権利擁護も必要」として設けたものである。この発想は「多数派が認める範囲内」でしか性的マイノリティーの人権・尊厳は認めないということになりかねない。 審議でLGBTの方が直面する問題ではなく、トイレなど女性スペース問題ばかりが取り上げられたが、女性の安全がトランスジェンダーの権利擁護によって脅かされるかのような言説は、トランスジェンダーの生命や健康にとって極めて危険なものになりかねない。トランスジェンダーも深刻な性被害を受けているのに被害を認められず、支援や相談の対象にもならない、自分の性的指向・性自認による差別排除への不安を抱え続けている生きづらさ、孤独、差別は命に関わる問題で、差別解消の緊急性は明らかである。 また、学校での教育・啓発は「家庭及び地域住民その他の関係者の協力を得つつ」行うとしており、これも「多数派が認める範囲内」での教育の自由・啓発しか認めないという発想で、教育現場が委縮しかねない。 本立法は、2021年に超党派のLGBT議連で合意した、差別を許さないために最低限必要な措置を定めた「議連合意」案の「差別は許されない」であったものを「不当な差別はあってはならない」に変更した。これは「正当な差別」が存在するかのような規定であり、差別を温存しかねない。さらに、国に義務付けた「調査研究」を「学術研究」に置き換え、「調査」を削除したことは、公的調査を行う国の責務を弱めるものである。 多数派の権利擁護のための「留意事項」について「政府が指針を策定する」としているのは、自治体による先進的な条例や民間団体の自発的な活動など、この法律全体を「多数派が認める範囲内」での施策に抑え込もうとするものである。 このように本立法は、目的のはずの理解増進を阻み、マイノリティーに対する差別をなくそうとする流れに逆行している。性的マイノリティーを排除することなく、性の多様性を認め合い、誰もが「個人の尊厳」を尊重される社会をつくることが世界の流れであり、求められていることである。 よって、本市議会は、成立したLGBT理解増進法を廃止し、差別と偏見を広げない新たな立法を求めるものである。 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。 令和5年7月3日 佐 倉 市 議 会 衆議院議長 参議院議長 内閣総理大臣 宛 法務大臣 文部科学大臣 |