請願第33号 細菌性髄膜炎を予防するワクチンの早期定期予防接種化を求める国への意見書提出を求める請願
受理日:平成21年8月24日
付託委員会:文教福祉
付託日:平成21年9月7日
審査日:平成21年9月15日
審査結果:採択(賛成多数)
議決日:平成21年9月30日
議決結果:採択(起立多数)
岡村芳樹
請願趣旨
細菌性髄膜炎は5歳未満の子どもたちがかかると予後の悪い重篤な感染症です。わが国では毎年約1000人の子どもたちが罹患していると推定されています。その約6割強がインフルエンザ菌b型(Hib=ヒブ)によるもの、約3割が肺炎球菌によるもので、この二つの起因菌によるものが全体の約9割を占めています。いずれも日常的に存在し格別珍しい細菌ではありません。細菌性髄膜炎の発症早期には発熱と嘔吐以外に特別な症状がみられない場合が多く、早期診断が大変難しい疾病です。治療には起因菌に有効な抗生物質を高容量投与しますが、近年、特にヒブの薬剤に対する耐性化が急速に進んでおり、適切な治療が難しくなってきていることが指摘されています。
しかも迅速な治療が施されても、ヒブの場合で3〜5%、肺炎球菌の場合で10〜15%の患児が死亡します。生存した場合でも10〜20%に脳と神経に重大な損傷が生じ、水頭症、難聴、脳性まひ、精神遅滞等の後遺症を引き起こします。
ヒブと肺炎球菌による細菌性髄膜炎はワクチン接種によって予防することができます。
ヒブワクチンは多くの国々で承認され、133カ国以上で定期予防接種されています。世界保健機関(WHO)はワクチンの有効性と安全性を高く評価し、1998年に世界中の全ての国に対して、乳幼児へのヒブワクチン無料接種を求める勧告を出し、ワクチンを定期接種に組み込むことを推奨しています。肺炎球菌についても肺炎球菌ワクチン(7価ワクチン)が世界93カ国で承認され、米国やオーストラリア等35カ国で定期接種されています。これらのワクチンを定期予防接種化した国々では発症率が大幅に減少しており、アメリカではヒブ髄膜炎の発症率が約100分の1に激減したと報告されています。
ところが日本ではWHOの推奨から10年以上が経過した現在においても、ヒブワクチンは定期予防接種化されていません。そうした状況の中、「世界の多くの国で有効なワクチンを日本でも一日も早く導入して、細菌性髄膜炎から子どもたちを守りたい」との思いで運動されている「細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会」(田中美紀代表・大阪市東成区)や国内、県内の小児科医をはじめ多くの関係者の努力が実り、厚生労働省の決断するところとなり、2008年12月より国内発売が開始されました。ようやく任意接種ですが希望する子どもたちに接種することができるようになりましたが、4回接種で約30,000円の自己負担となっており、経済的な負担を理由に接種することができないお子さんが出てしまうことがとても気がかりです。
また、現在日本で承認されている肺炎球菌ワクチン(23価多糖体ワクチン)は、免疫力の未熟な乳幼児には効果が期待できず、乳幼児に使用できる肺炎球菌ワクチン(7価ワクチン)は承認待ちの状況で一日も早い導入が求められています。
ヒブワクチンと肺炎球菌ワクチンの定期接種化により、細菌性髄膜炎の多くを防ぐことができます。早期発見が難しく、迅速に治療しても予後が悪く、さらに菌の薬剤耐性の高まりによる治療の困難化が指摘されている現状からも、早期に定期予防接種化することが重要であるため、下記の項目を国ならびに関係機関への地方自治法第99条の規定により意見書として提出くださいますよう請願いたします。
1、速やかにヒブ重症感染症(髄膜炎、喉頭蓋炎、および敗血症)を予防接種法による定期接種対象疾患(一類疾病)に位置づけること。
2、小児用肺炎球菌ワクチン(7価ワクチン)の早期薬事法承認のための手立てを講じること。