請願第5号 「高校歴史教科書検定での沖縄戦『集団自決』に関する記載内容」への修正指示撤回を求める意見書提出を求める請願
受理日:平成19年8月24日
付託委員会:文教福祉
付託日:平成19年9月10日
審査日:平成19年9月18日
審査結果:不採択(可否同数)
議決日:平成19年10月1日
議決結果:不採択(起立少数)
工藤啓子
藤崎良次
勝田治子
萩原陽子
兒玉正直
2007年3月30日に公表された高校教科書検定結果で、沖縄戦における「集団自決」に関わる記述について「沖縄戦の実態について誤解するおそれのある表現」とし、日本軍による命令・強制・誘導等の表現を削除・修正するよう指示していたことが明らかになりました。
検定意見によって、日本軍という主語が消されてしまい、「集団自決」とは、「住民が勝手に自ら死んだ」とも読める教科書が全国の子どもたちの手に渡ろうとしています。
沖縄戦の記述をめぐっては、1982年、文部省(当時)の検定により、日本軍による「住民虐殺」の記述削除が明らかになった際、沖縄の臨時県議会(1982年9月)は「県民殺害は否定することのできない厳然たる事実である」と全会一致で意見書を採択し、記述復活をさせました。その際、文部省自らが、沖縄戦の住民犠牲を記載する場合は、「集団自決」も記述するよう求めていました。
そして第3次家永教科書裁判における最高裁判決は「『集団自決』の原因については、日本軍の存在とその誘導」かつ「自ら死んだ集団自決と表現をしたり、美化することは適切ではない」と明確に示しています。このような経過から「集団自決」が教科書記述として定着してきたのです。
今回、文部科学省は記述修正・削除の主な理由として、大阪での「集団自決」訴訟を挙げています。しかし、この裁判は一個人の名誉毀損の訴訟であり、その主張が沖縄戦の全体像を表しているものではありません。しかも裁判は現在係争中であり、そのことをもって教科書を書き換えさせることは逆に裁判へ政治的な影響を与えるものとなります。さらに、裁判の原告側主張のみを一方的に取り上げることは、体験者を愚弄するばかりか、今なお証言し続けている体験者の叫びを無視し、これまでの研究の成果である「県史」や今なお進められている各市町村による沖縄戦の調査を否定するものとなります。
沖縄戦における集団死・「集団自決」が、「軍による強制・強要・命令・誘導等」によって引き起こされたことは、否定できない事実です。その事実がゆがめられることは、悲惨な地上戦を体験し、筆舌に尽くしがたい犠牲を強いられてきた沖縄県民だけでなく、私たちにとっても到底容認できるものではありません。
既に、沖縄県議会は検定意見の撤回を求める意見書を二度にわたり可決し、さらに県内全41市町村議会すべてが、白紙撤回などを求める意見書採択を行なっています。6月9日には県民大会を開き、文部科学省への直接申し入れも行ってきました。しかし、今日に至るまで文部科学省は、そうした沖縄県民全体の声を真摯に受け止めずに来ており、この事態を私たちとしても黙認することは出来ません。
教科書は子どもたちに真実を伝える重要な役割を担っています。だからこそ、沖縄戦の実相を正しく教え伝え、悲惨な戦争が再び起こることがないようにしなければなりません。私たちは文部科学省に対して、今回の検定意見を取り消し、沖縄戦における「集団自決」の実相を復活させることを強く求めます。
貴議会におきましても、高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決」に関する教科書検定意見をただちに撤回する意見書を文部科学省に提出していただきたく請願いたします。
【請願項目】
一、「沖縄戦の実相」を子どもたちに伝えるため、沖縄戦「集団自決」に関する教科書検定意見をただちに撤回する意見書を文部科学省に提出すること。
以上