発議案第11号 長崎県「石木ダム」建設強行の見直しを求める意見書
松島梢
萩原陽子
藤崎良次
稲田敏昭
議決日:令和2年3月24日
議決結果:否決(起立少数)
長崎県と佐世保市の共同事業として同県川棚町に計画している「石木ダム」は国が事業認可してから45年となる。同ダム建設により立ち退きを求められている全13世帯の住民が一貫して反対を主張する中、昨年11月に福岡高裁で「事業認定取り消し訴訟」が棄却され、現在原告は最高裁に上告中である。しかし、長崎県は2020年度当初予算案に、基礎掘削工事費ほか8億円の着工費用を計上したところである。当該住民の抗議の座り込みも800日を超え、事態は緊迫度を増している。
「石木ダム」建設の目的は、「佐世保市の水の確保=利水」と「川棚川の洪水の防止=治水」の2点であるとされる。
しかし、利水に関しては、今後も水需要が右肩上がりとする佐世保市水道局の予測に反して、1999年度をピークとした一日最大給水量はその後大幅に減少している。予測と実態が大きく乖離していることは、実績を見れば明らかであり、賛同者120名を超える「ダム検証のあり方を問う科学者の会」が「あまりにも現実とかけ離れており、科学的根拠が欠如している」と、2月4日、予測のやり直しを求める意見書を佐世保市に提出した。
また治水に関しても、近年頻発する100年に一度という豪雨には、石木ダムは川棚川の全流域面積のわずか8.8%にしか対応できないとされ、治水能力は極めて乏しい。さらに同ダムは、ゲートの無い自然調節式のダムで、放流量を人為的に調節する機能がなく、想定外の洪水には対応できない。ダムが洪水を防ぐという考え方からの脱却が必要である。
利水、治水両面において建設の必要性が根拠薄弱であるにもかかわらず、半世紀近くに及ぶ住民の反対を無視して建設に着工することは、1972年に長崎県知事、建設予定地3部落の総代との間で取り交わされた、あくまでも地元の「書面による同意」を受けて「着工」という「覚書」に違反するものでもある。
国、長崎県においては、佐世保市とも協議しつつ現今の利水、治水状況を冷静に判断し、貴重な自然を破壊し、流域住民に心理的かつ経済的負担を過剰に課する「石木ダム」建設計画の抜本的見直しと、社会的及び環境的状況が根本的に異なる時代に決定された「事業認可」の取り消しを強く求めるものである。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和2年3月24日
佐 倉 市 議 会
内閣総理大臣
国土交通大臣 宛
長崎県知事