発議案第2号 格差を拡大する教育基本法改正案に反対し廃案を求める意見書
入江晶子
戸村庄治
冨塚忠雄
藤崎良次
議決日:平成18年9月29日
議決結果:否決(起立少数)
教育基本法を改正する政府案・民主党案ともに先の国会で継続審議となり、次の臨時国会で審議が再開されます。
教育基本法改正については、既に学校現場で行われている「日の丸・君が代」の強制や入学式・卒業式で起立しない教員の処分が当たり前とされ、通知表での「愛国心」評価が義務付けられるのではないかなど、愛国心教育の強化が最も心配されています。「愛国心」は自然に育まれるべき感情で、強制も評価も本来できるものではなく、過去の歴史を振り返ると、決してしてはならないものです。
また、「改正案」では、教育目標、教育内容、家庭から学校・地域のあり方、更に幼児教育から大学教育・生涯教育まで国や自治体の方針に沿って決める「統治行為としての教育」と、財界からの要請に応える国際競争に打ち勝つための「エリート養成」・「国家戦略としての教育」への道筋がつけられようとしています。既に、教育行政による学校教育の統制・管理は強化され、同時に飛び入学やスーパーハイスクール、公立の中高一貫校設置等、エリート教育の推進強化や予算の重点配分も進行中で、その動きを、「教育振興基本計画」として法律的に追認しようとするものです。その一方、教育予算の総額は削減され、千葉県においても県立高校の統廃合や夜間高校の廃止が進められています。
現在、失業や離婚などによって経済的困難を抱え、十分な生活環境や教育環境もつくれない家庭が増えています。そのような家庭にあって、授業についていけないまま進級、進学し、更に高校受験で学力別に選別分離され、そこにしか行き場はないと遠くの高校に進学した子どもの多くは、自信も将来への希望も持てず、中途退学するケースも増えています。また、親の突然のリストラ等による家庭の経済状況の悪化によって、退学を余儀なくされたり、在籍しながらアルバイト中心の生活になってしまい、中退や卒業後、その子どもたちの多くが定職に就けないままフリーターとなったり、ニートと呼ばれる状況になったりもしています。
不登校が小中高で19万人、高校中退8万人、引きこもりは100万人とも言われていますが、格差社会が進行する中で、何とかわが子を「勝ち組」にと躍起になる親の期待に対して疲れて限界に達してしまった子、自分はダメだとあきらめてしまった子、競争にどうしてもなじめない子、過酷ないじめの被害者となった子と、さまざまな子どもたちの姿が見えます。
現在提出されている両案のように教育基本法改正が行われたなら、更に子どもたちを追い詰めることは明らかです。進行する格差社会にストップをかけ、サポートを必要とする家庭や子どもへの支援体制を確立し、もう一度現在の教育基本法の精神に立ち戻り、すべての子どもたちの、子どもたち自身のための教育を取り戻すことが緊急に求められています。
よって、佐倉市議会は、政府及び国会に対し、教育基本法改正案の廃案を強く求めます。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。
平成18年9月29日
佐 倉 市 議 会
内閣総理大臣
文部科学大臣 宛
衆義院議長
参議院議長