発議案第7号 人権と地方自治を無効化する「緊急事態条項」新設に反対する意見書
大野博美
萩原陽子
伊藤壽子
藤崎良次
冨塚忠雄
議決日:平成28年3月22日
議決結果:否決(起立少数)
昨年10〜12月期のGDPが年率換算で1.4%減となるなど、アベノミクスの失敗が明らかになった今、安倍首相は今年7月の参院選での争点を、「経済対策」から「憲法改正」へと急激にシフトし始めた。本丸は9条改正であるが、まずは「緊急事態条項」を憲法に新設することから始め、憲法の明文改正への突破口を開こうとしている。
この条項は、2012年発表の自民党改憲草案98条で、「我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態」に、総理が国会の同意がなくても、「緊急事態」を宣言することができると規定されている。発令されると、立法権も予算権も内閣が掌握し、強大化したこの行政権に対して、国民は「服従しなければならない」とまで定められ、人権は大きく制限される。また、地方自治体の首長への命令権も内閣に与えられ、地方自治は崩壊してしまう。
更に、他国の国家緊急権の場合、期限が区切られていたり、制約が設けられているが、自民党改憲草案では、期限も区切られず、国会の延長も可能なため、事実上、無期限、無制限な万能の権力を振るえることになる。
しかし、多くの憲法学者、有識者が指摘しているとおり、自民党が想定している緊急事態に対しては、現行法と現憲法内ですべて対処可能である。
大規模な自然災害に対しては、「災害緊急事態」を盛り込んだ「災害対策基本法」が既にある。「政治空白の回避策」としての「緊急事態における国会議員の任期延長」に対しては、現憲法54条2項の参議院の「緊急集会」で対応可能であり、テロや武力攻撃、内乱に対しては警察法、自衛隊法により十分対処可能である。憲法を変える必要は全くない。
日弁連の調査によれば、東日本大震災の被災自治体で「緊急事態条項」が必要とすると答えた首長は皆無であり、逆に岩手、宮城、福島、新潟、兵庫という大震災を経験した自治体の弁護士会が同条項新設に反対する会長声明を出している。
災害時に必要なのは、臨機応変・迅速に動けるよう現場自治体の権限を強化することであり、国への権限集中ではない。
国においては、「緊急時」における自治体の裁量権の拡大や、防災対策の基盤整備ならびに予防的施策にこそ力を尽くすべきである。人権と地方自治を無効化する「緊急事態条項」新設の議論を即刻に停止することを強く求めるものである。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成28年3月22日
佐 倉 市 議 会
内閣総理大臣 宛