発議案第7号 秘密保全法案(仮称)の国会提出中止を求める意見書
伊藤壽子
村田穣史
上ノ山博夫
冨塚忠雄
萩原陽子
議決日:平成24年3月19日
議決結果:否決(起立少数)
野田内閣は今通常国会に、「秘密保全法案」(仮称)を提出し成立を目指しているが、本法案には次のような重大な問題点がある。
一、「国の安全(防衛)」「外交」「公共の安全及び秩序の維持」の三分野を対象に、「国の存立にとって重要なもの」を「特別秘密」に指定し、規制の対象とするとされるが、その概念が曖昧かつ広範であり、指定するのは当事者である各行政機関である。国の都合によって、本来国民が知るべき情報が国民の目から隠されてしまう危険性が極めて大きい。原発事故における国の事実隠蔽も、本法案では正当化されてしまうのである。
二、禁止行為として、漏洩行為の独立教唆、扇動行為、共謀行為や、「特定取得行為」と称する秘密探知行為についても処罰しようとしており、単純な取材行為すら処罰対象となりかねない。そこでの禁止行為は曖昧かつ広範であり、この点からも刑事法上の基本原理と矛盾するものである。現実の場面を考えても、取材及び報道に対する萎縮効果が極めて大きく、国の行政機関、独立行政法人、地方公共団体、一定の場合の民間事業者・大学に対して取材しようとするジャーナリストの取材の自由・報道の自由が侵害されることとなる。
三、当秘密保全法案の検討のきっかけとなった尖閣諸島沖中国船追突映像の流出は、国家秘密の流出というべき事案とは到底言えないものであり、秘密保全のために新たな法制を設ける必要性はなく、国家公務員法等の現行法制でも十分に対応できるものである。
四、当該秘密保全法制に関わり起訴された者の裁判手続は、憲法に定められた基本的人権である公開の法廷で裁判を受ける権利や弁護を受ける権利を侵害するおそれがある。
主権者である国民の間での秘密保全法制についての議論が十分になされていない現状で、憲法で保障されている「知る権利」を侵害する内容を早急に立法化することは認められるものではない。本法案の国会提出を中止するよう、強く求めるものである。
右、地方自治法第九十九条の規定により意見書を提出する。
平成二十四年三月十九日
佐 倉 市 議 会
内閣総理大臣
総務大臣 宛
法務大臣