発議案第10号 国交省関東地方整備局に対して、八ツ場ダムに関する検証のやり直しを命ずることを求める意見書
伊藤壽子
上ノ山博夫
冨塚忠雄
萩原陽子
議決日:平成23年12月19日
議決結果:否決(起立少数)
八ツ場ダム建設の是非を巡り、国土交通省関東地方整備局は十一月二十一日、「建設の続行が妥当」とする方針案を公表した。前田国交相は年内に最終判断を下すとされている。
しかし、方針案がでるまでの「検証」経緯を見ると、極めて非科学的・恣意的、かつ不公正なものと断ぜざるをえない。
まず「できるだけダムに頼らない治水」への政策転換を目的として設置された「今後の治水のあり方を考える有識者会議」は、ダム推進派の委員が複数入る一方で、ダム懐疑派の専門家は一切排除された。果たして、有識者会議が昨年九月に出したダム検証の実施要領には、ダム事業を推進してきた河川官僚の意思が色濃く反映され、おまけにそれに沿って作られた検証システムは、ダム事業者(関東地整)自らが検証するという二重に客観性に欠けたものとなった。しかも、治水・利水とも自ら全く精査を行わずひたすらダム推進を主張する関係六都県を参加させる一方で、ダム見直しを求める流域住民は検証の場から完全に排除された。
このような経緯で今回示された「検証結果」には、以下の重大な問題点がある。
一.利水に関しての問題点
首都圏全体に水余り傾向が顕著であり、余裕水源は東京で一日二百万トン、千葉県では八十万トンに達する。人口も国立社会保障・人口問題研究所によれば、二〇一五年から減少傾向に入る。このような状況を全く無視し、「水が大量に足りない」という前提からスタートし、富士川から水を引くなどという荒唐無稽で巨額の費用がかかる代替案と比較して、八ツ場ダムの方が有利であるという結論を導き出すなど、到底科学的検証とは思えない。
二.治水についての問題点
八ツ場ダム建設の根拠となった一九四七年のカスリーン台風が再来した場合、八ツ場ダムの治水効果が実はゼロであることを、二〇〇八年、国交省自ら公表した。ところが今回の検証では、突如八ツ場ダムの流量カット能力を従来の二・六倍に引き上げた。多くの学者が計算根拠に疑問を呈しており、八ツ場ダムが有利になるよう数字が操作されたと言わざるをえない。
三.八ツ場ダム予定地の地盤の問題点
建設予定地周辺は、浅間山の噴火により火山灰や岩屑が降り積もった脆弱な地層であり、今も昔も地滑り多発地帯である。そこにダムを造ること自体、危険極まりない。更に、代替地として三十メートルもの盛土をした宅地造成するなど、住民の命をないがしろにする暴挙である。地質学者も、ひとたび大きな地震が起きれば、代替地がもちこたえられるかどうか、懸念を表明している。今年九月の台風十二号で、奈良県十津川村などに「深層崩壊」と呼ばれる大規模な山崩れが起きたが、これと同じ現象が、八ツ場ダム代替地で起きる可能性が指摘されている。
以上のことから、国土交通大臣におかれては、関東地方整備局に対して検証のやり直しを命じ、中立的・客観的・科学的な検証ができる場を改めて設置することを強く要望する。
右、地方自治法第九十九条の規定により意見書を提出する。
平成二十三年十二月十九日
佐 倉 市 議 会
内閣総理大臣
国土交通大臣 宛