発議案第14号 奨学金制度の再設計と抜本的拡充、返済困難者への対策を求める意見書
伊藤壽子
藤崎良次
兒玉正直
冨塚忠雄
工藤啓子
議決日:平成22年12月22日
議決結果:否決(起立少数)
日本学生支援機構(旧日本育英会)は、奨学金の返済を3ケ月以上延滞した利用者を債権回収会社に回し、さらに個人信用機関に通報する制度を本年度より導入した。
また、文部科学省は2012年度より貸与基準の厳格化と、無利子奨学金の貸与条件に「社会貢献活動への参加」を追加する方針を決定している。
長引く不況により、大学・大学院卒業後の若年層にとって安定した就業と収入の確保が難しい状態が続く中、卒業後の奨学金返済が困難になる社会人が増加している。とりわけ有利子の「第二種」返済者は、利子に加えて延滞金が課せられるため、当初の返済金額を大きく上回る債務を背負うことになる。それに加えて督促の強化、いわゆる「金融ブラックリスト」への登録まで課せられることになった。
1999年の有利子奨学金の導入により、奨学金利用学生数は大きく膨らみ、また、不況の影響もあり、現在大学生の3人に1人、大学院生の2人に1人が奨学金の貸与を受けており、滞納の増加も著しいとされている。
OECD各国が給付型を主流に人材育成のために手厚い奨学金制度を実現している。わが国は高等教育にかかる学費が高額である。しかし、高等教育費の公財政支出対GDP比はOECD加盟国中最低レベルであり、給付型の奨学金は事実上皆無、3%の有利子奨学金利用者が7割を超す状況である。
こうした中での奨学金貸与条件の厳格化と返済への締め付けの強化は、日本国憲法第26条が保障する「等しく教育を受ける権利」を侵害し、教育を通じた格差の固定化と連鎖につながるものである。文部科学省と日本学生支援機構は「将来に向けた人材育成」という奨学金の本来の主旨に立ち戻り、学ぶ意欲を守る奨学金制度へと制度設計をし直すべきである。また一方的に無理な返済を強要することなく、生活困窮者一人一人の実態を勘案した返済計画を提示することを強く求めるものである。そして、国際人権A規約13条における「高等教育無償化条項」の世界にもまれな「留保」を撤回し、高等教育無償化への道筋を明らかにすべきである。
よって本市議会は、下記の事項を強く求めるものである。
一、国連人権A規約13条2項(b)及び(c)「中等・高等教育無償化」の「留保」の即時撤回
二、教育予算の増額、高等教育学費負担の軽減
三、奨学金返済延滞者のブラックリスト化の中止・撤回
四、奨学金返済猶予期間の五年上限の撤廃
五、無利子奨学金の拡充と給付型奨学金の創設
右、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成22年12月22日
佐 倉 市 議 会
内閣総理大臣
文部科学大臣 宛