陳情第26号 現行保育制度に基づく保育施策の拡充に関する意見書の提出を求める陳情
受理日:平成21年8月3日
付託委員会:文教福祉
付託日:平成21年9月7日
審査日:平成21年9月15日
審査結果:採択(可否同数)
議決日:平成21年9月30日
議決結果:採択(起立多数)
国の「公立保育所をつくらせない」という方針のもと、老朽化などによる公立保育所の減少が進み、少子化の進行にもかかわらず、保育所に入れない待機児童は増加の一途をたどり、経済環境の悪化とあいまって、「子どもを家において働きにでている」という深刻な事態も広がっています。国会では、私たちが提出した「保育・学童保育・子育て支援施策の拡充と予算の大幅増額を求める請願」が2006年以降、第165回臨時国会、第166回通常国会、第169回通常国会、第170回臨時国会において衆参両院で全会派一致で採択されており、保育・学童保育・子育て支援の拡充が国民の要求になっていることは明らかです。
しかし、国は財界主導の委員会などの議論を受け、社会保障審議会少子化対策特別部会で保育制度「改革」の議論を進め、本年2月24日に「直接契約・直接補助方式・保育水準の後退容認・保育料の応益負担」など、現行保育制度を福祉からサービスへと根本的に転換させる「第1次報告」を提案しました。
この提案が実施されると、保護者は受けられる保育時間が勤務状況などで制限され、保育内容も保育料に応じて多様化されます。保護者は、定員超過入所をしても待機児があふれているなか、市町村の入所調整もなく、保育所を自ら探して安定的な契約ができなければ仕事を続けることが困難になります。保育所は子どもの保育時間が個々に異なるため効率的な子どもの受入調整や保育料の徴収、契約手続き、苦情対応など事務量が大幅に増えます。保育所の収入は、保育実施時間に対応するため、保育者は子どもの時間変動に対応することが求められ、時間パート的な勤務にならざるを得ません。これらの全ての影響を受けるのは子どもです。保育内容は保護者の経済力に左右され、保育所では保育を受ける子どもや保育者がめまぐるしく変わり、集団保育や一人一人の子どもに対応した保育を受けることは困難です。これらのことが、子どもの保育環境にとって良くないことは明らかであり、子どもの発達と成長を保障するための制度としては、提案されている制度は不適切なものです。
現行保育制度は、「保育所を子どもにより良い環境をあたえるところ」と位置づけ、保育の公的責任を明確にし、保育水準とそれを維持するための財源を明確にしています。少子化や子どもが保育所に入れないので働けない、また、子育てへの支援を求めている多くの国民に必要なことは、保育を金次第とする不安定な市場原理に委ねることではなく、幾度にも及ぶ国会の全会派一致の意思に示されているように、現行保育制度を拡充し、安心して子育てをし、働くことを保障する以外にありません。ことは急を要します。
以上の理由により、貴議会にて、国に対して、「現行保育制度の堅持・拡充と保育・学童保育・子育て支援予算の大幅増額」を求める意見書を提出していただくことを陳情するものです。