陳情第43号 政府与党提案「改正教育基本法」の廃案を求める意見書提出のための陳情
受理日:平成18年11月27日
付託委員会:文教福祉
付託日:平成18年12月11日
審査日:平成18年12月19日
審査結果:不採択(賛成少数)
議決日:平成18年12月22日
議決結果:不採択(起立少数)
【要旨】政府与党は、さきの通常国会で継続審議とされた「教育基本法改正案」を、11月15日に衆議院特別委員会で、16日には衆議院本会議で与党単独で強行採決し、11月17日には参議院での審議を、同じく単独で開始した。広く主権者の意見が反映されないまま教育の憲法とも言うべき同法を改正することは基本的人権と民主主義の本旨にも反することである。政府与党提案の「改正教育基本法」を廃案にし、現行教育基本法に基づく教育行政を行うよう求める意見書を、衆参両議院、首相、文部科学省に提出されたい。
【理由】今回の「教育基本法改正案」の審議においては以下の問題点がある。
1、衆議院で、与党である自民党、公明党の強行採決、さらに野党欠席のままの参議院での審議入りの決定は、主権者の信託に基づく議会制民主主義の根幹を踏みにじるものであり、主権者の意思をないがしろにした暴挙である。
2、「教育基本法」を改正する是非をはじめ、なぜ「改正」する必要があるのか「改正」することで何が変わるのかという本質的な議論がほとんどなされず、単に「審議時間が100時間を超えたから審議は尽くした」という時間数のみを理由に採決を行った。現「教育基本法」は「準憲法」と位置づけられる最重要法であり、日弁連も会長声明において「性急な改正は反対である」と述べている。まず「改正ありき」の政府与党の姿勢は認めることができない。
3、政府与党は「中教審答申」から3年間に及ぶ法案の作成過程を全く公開せず、さらには法案提出後、主権者である国民への広範な周知努力、国民による議論への付託を怠っている。「準憲法」と位置づけられる最重要法の改正であることから、勤労者、教育現場にいる教員、当事者である子どもたちや父母をはじめとする主権者の意見を求め、また今日の労働現場、社会状況、教育現場の実情について徹底した調査と検討がなされなければならない。しかし、衆議院での審議の中で明らかとなった「高校未履修問題」そして「いじめ問題」についての政府与党側のずさんな答弁で明らかなように、現場の実態すら把握されていない中で「改正」は強行された。
4、現法10条に謳われる「教育は不当な支配に服することなく、国民全体に対して直接責任を負う」ものであること、「行政の役割は教育の条件整備に限られる」という内容を根本的に変えている。このことは、現法10条が日本国憲法19条、23条そして26条に基づくものであることを示すものであり、従って憲法に抵触する内容を持つ政府与党案の「改正教育基本法」の提出は、日本国憲法第99条に違反するものである。
以上のように、多くの問題点をもつ「教育基本法改正案」が、参議院においても拙速に審議され、同じく強行に採決がなされることは、これからの日本の教育のみならず、アジア地域ひいては世界各国の平和共存という観点からも重大な過ちであると考える。従って政府与党提案の「改正教育基本法」は廃案にし、現行教育基本法のもとで現場の諸課題の解決と改正の是非を含めた国民的な議論の出直しを強く求めるものである。