陳情第38号 最低賃金制度の改正を求める陳情
受理日:平成18年5月26日
付託委員会:経済環境
付託日:平成18年6月12日
審査日:平成18年6月19日
審査結果:不採択(賛成少数)
議決日:平成18年6月23日
議決結果:不採択(起立少数)
2006年 5月 26日
佐倉市議会議長 檀谷 正彦 様
最低賃金制度の改正を求める陳情
【陳情の趣旨】
格差拡大社会の弊害が、いたるところに噴出しています。上場企業は4年連続して増収・増益を達成し、遅ればせながら中小企業の景況も回復基調にあると言われています。一方、労働者についてみれば、失業率は低下したとは言え、平均賃金は7年連続して低下し、働いても貧しさから抜け出せない「非正規」不安定雇用の増加ばかりが目立ちます。とりわけ青年の雇用情勢は相変わらず厳しく、正規就労を希望してもパート・臨時、派遣、請負などで働くことを余儀なくされ、あげくは求職も就学もあきらめてニート状態にとなる人も増えています。こうしたことが、この国の未来の見通しを暗くさせている大きな要因です。
「非正規」労働者は今や雇用労働者全体の3割を占め、「基幹的」あるいは「典型的」働き手として職場を支えていることも珍しくありませんが、低賃金はいっこうに改善されません。経済の規制緩和が進められるなかで、最低限のセーフティ・ネットである最低賃金法がきちんと機能していないためにこうした事態が放置されています。今の我が地方の地域別最低貸金は682円にすぎず、フルタイム(8時間×22日=176時間)で働けたとしても月収12万円にしかなりません。最低貸金での暮らしは、健康に支障がでるほど食費を切りつめ、交際はもちろん冠婚葬祭も不義理して節約しても収支赤字となってしまいます。このような低額の最低賃金は抜本的に引き上げる必要がありますが、個別企業の努力だけで低賃金を引き上げることは容易ではありません。法定最低賃金制度によって競争条件をそろえながら貸金の最低額を引き上げることが、今、重要な社会政策となっています。
また、今の最低賃金制度は、隣県との不合理な格差や、全国的に一貫した仕組みでないために社会保障制度(生活保護制度や年金制度など)との整合性がない問題、下請単価・工賃、米価・自家労賃等との連関がない問題などを抱えています。さらに最低生計費には非課税が近代税制の基本ですが、現行制度ではこの基本も守られていません(生活保護費は非課税です)。
憲法は「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」(第25条)を万民に保障し、働く際の労働条件は「人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない」(労働基準法第1条)と定めています。働けば、貧困に苦しまず生活できて当然であり、これを保障する最低賃金制度は、最低賃金額について「労働者の生計費、類似の労働者の賃金、通常の事業の支払い能力を考慮して決める」(最低賃金法3条)としています。今の最低賃金の実態は、こうした法の趣旨をみたしていないと言わざるをえません。最低賃金法を改正して生計費原則をみたした最低賃金額を実現すること。それをもって、中小企業の下請単価の底支えとし、地域経済の回復と持続的発展をはかることが重要です。
貴議会におかれましては、以上の趣旨をご理解いただきたく、下記事項につき陳情します。
【陳情事項】
1.最低賃金制度に関し、国に対して別紙の意見書を提出するよう陳情します。
最低賃金の引き上げを求める意見書(案)
最低賃金制度は、労働条件改善による労働者の生活の安定と地域経済の活性化、企業間の公正競争ルール確立の上で、重要な役割を担っています。都道府県ごとに定められる地域別最低賃金は、毎年、中央最低賃金審議会が答申する「目安額」を参考に、地方最低賃金審議会の審議を経て改定されています。
しかしながら、我が地方の現在の改定額は、時間額682円と一般労働者の賃金に比べて極めて低い水準に設定されており、その影響で、県下パート・臨時労働者、請負・派遣労働者ら非正規労働者の賃金も低く抑えられています。青年単身者では1ヶ月10万円ほどの生活を余儀なくされている人も少なくありません。低賃金労働者は年々増加しており、社会保険料の未納者や、経済的自立ができずに結婚ができない人を増加させ、少子化傾向の加速など、この国の社会基盤をあやうくさせる原因のひとつとなっています。
以上をふまえ、政府においては最低賃金法を早期に改正し、今の金額を生計費原則をみたす額にまで大幅に引き上げ、生活保護基準などの社会保障制度との整合性をはかること、最低賃金額を大幅に引き上げて生計費原則をみたすようにするとともに、欧米諸国で制度化されている全国一律最低賃金の確立を早期にはかり、最低賃金制度の周知徹底、監督体制の拡充など、一層の充実をはかられることを強く要望します。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。
2006年 月 日
○○議会議長 ○○○○
内閣総理大臣 小泉純一郎殿
厚生労働大臣 川崎 二郎殿